2018年7月1日日曜日

桐山秀樹さんの死から考える糖質制限のリスク

桐山秀樹さんの死

ちょっと古い話になりますが、2016年02月26日に作家の桐山秀樹さんが亡くなられました。
桐山秀樹さんは江部康二先生の熱烈な支持者として知られ、糖質制限の本を数多く書かれた方です。そのためマスコミでは「糖質制限は危険だ」の大合唱になりました。

桐山秀樹さんは糖質制限で糖尿病を克服された方です。それなのに、いったいどうして心筋梗塞になってしまったのでしょうか。


江部先生の見解

桐山秀樹さんの糖質制限の師である江部康二先生はブログでこのように述べておられます。

桐山秀樹さんは、糖質制限食ではなかった。
こんにちは。
2月25日(木)発売の週刊文春に、桐山秀樹さんと長年パートナーで過ごした、文芸評論家の吉村祐美さんのインタビュー記事が掲載されました。
冒頭、吉村さんは、桐山さんの急死と糖質制限食の関係をきっぱり否定しておられます。
桐山さんは、2010年に気分不良で近医を受診、HbA1c:9.4%、高血圧、肥満、脂質異常症を指摘され、医師に「何でこんなになるまで放っておいたのですか!?」と怒られたそうです。
その少し前に、眼科の取材のときに眼底検査をして貰い、糖尿病網膜症があったとのことですので、すでにその時点で数年間以上高血糖の期間があり、一定の動脈硬化があったと思われます。すなわち高血糖の記憶(消えない動脈硬化の借金)です。
その後、高雄病院方式のスーパー糖質制限食で減量成功され、半年後には、血糖値もHbA1cもコントロール良好となられました。
桐山さんは、糖質制限食半年で、肥満が改善し、血糖値も改善した時点あたりから、ご自分で判断されて、糖質を摂取される食事となったと、考えられます。
つまり、ここ、4~5年間は、過去のように野放しに糖質摂取することははないけれど、あるていどの糖質を摂取されていたのです。
すなわち、「少なくとも最近の4~5年間は糖質制限食ではない」ということです。
吉村さんによれば、朝は果物、野菜ジュース。
昼は、サラダや卵、たまにパスタ、うどん。
夜は毎日玄米を摂取して普通のおかず。
編集者との会食、地方の取材では相手と同じもの摂取。
ということです。
取材や旅行や編集者との会食もかなり多かったので、糖質制限食の範疇(糖質摂取が130g/日以下)からは、外れています。
主治医には定期的に血液検査を受けて血糖コントロール良好を保っておられ、とてもお元気でしたので、今回のことは残念でなりません。
血糖値もHbA1cもコントロール良好を保っておられたので、桐山さんが選択された食生活が悪くて動脈硬化が進行したということではないと思いますが、グリコアルブミンや食後血糖値の測定もあればとも思います。
今回のことは、高血糖の記憶による冠動脈硬化がベースにあり、そこにストレスや多忙や旅の移動の疲れなどが積み重なって、心筋梗塞の引き金になったと考えられます。
あらためて、桐山秀樹さんのご冥福をお祈りしたいと思います。

江部康二



糖質制限で動脈硬化は治らない

江部先生は
「糖質制限では高血糖の記憶(消えない動脈硬化の借金)は治らない」
とおっしゃっています。
つまり、すべての血糖値が改善しても動脈硬化は残っているため、いつ動脈が詰まってもおかしくないという事です。にもかかわらず桐山秀樹さんは完全に健康体になったと勘違いし、糖質制限を緩めてしまいました。それが心筋梗塞という悲劇に繋がりました。


なぜ糖質制限で動脈硬化が治らないのか

それはずばり、「低インスリンになっていない」ためです。
実は動脈硬化の最大の原因は高血糖ではなく高インスリンである事が分かっています。
糖質制限は血糖値を重視するあまり、インスリンについては無頓着です。
血糖値さえ低ければ高インスリンでも問題無しと考えてしまいがちなのです。ここに、糖質制限の問題点があります。


低インスリン療法

低インスリン療法は新井圭輔医師が提唱されている療法です。
詳しくは以前ブログに書きました。
低インスリン療法ではインスリンレベルを低く保つ事に重点を置き、血糖値はあまり気にしません。


糖質制限と低インスリン療法の違い

ここでちょっと分かりにくいのが糖質制限と低インスリン療法の違いです。
以下の4つのケースを考えて見ます。
  1. 血糖値正常、インスリン低
  2. 血糖値高、インスリン低
  3. 血糖値正常、インスリン高
  4. 血糖値高、インスリン高
糖質制限では1,3はGOOD、2,4はNGと考えます。
一方、低インスリン療法では1,2はGOOD, 3,4はNGと考えます。


桐山秀樹さんの場合

桐山秀樹さんは典型的なメタボ型糖尿病でした。
メタボ型という事は人一倍、インスリンが出やすい体質という事です。よって、ダイエットすればインスリン抵抗性が下がり、血糖値が上がりにくくなります。

桐山秀樹さんはある時、糖質を摂取して血糖値を計ったところ、血糖値があまり上がらない事に気づきました。それでご飯を食べるようになり、パスタを食べるようになり、ビールを飲むようになっていったのでしょう。それでも血糖値は上がらなかったため、問題があるとは夢にも思わなかった事でしょう。でもこれは先ほどの
3.血糖値正常、インスリン高
の状態だったのです。
そのため知らず知らずのうちに動脈硬化が進行し、心筋梗塞になってしまいました。

桐山秀樹さんが早くからこの事に気づき低インスリン療法をやっていれば心筋梗塞にはならなかった事でしょう。残念な事です。


血糖値にこだわるのはやめよう

血糖値にこだわりすぎると桐山秀樹さんのように落とし穴にはまってしまいます。
これからは血糖値よりインスリン量に注意すべきです。

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